3.出産直後の赤ちゃんカンガルー抱っこについて

カンガルー抱っこが行われるのはなぜ?

医療信仰の事例としてもう一つ、2009年放送のニュースから「カンガルー抱っこ」について考えてみたいと思います。

出産後すぐに横になっている母親の胸に赤ちゃんの胸を合わせて抱かせる「カンガルー抱っこ」が、赤ちゃんのためによいということで行われているようです。
ところが中には赤ちゃんに異変が生じることもあり、異変が生じたらすぐにわかるように赤ちゃんに異変を知らせる器具を装着することも必要という医師の話でした。

私は、母親が半身を起こして抱っこするならよいかもしれませんが、母親が横になった状態では、赤ちゃんの胸は圧迫されることになり、顔は強制的に横向きにされ、手も横に伸ばされて、これでは体の自由が損なわれ、頚部にも悪影響が及ぶと思いました。
大人でもうつ伏せになるときは胸が圧迫されないように、自然の流れで額に腕を当てたりするのに、これでは赤ちゃんに異変が起こるのも当然と思いました。
また、母親は3キロ近い重量を胸に載せられて、出産直後の体への負担は大きいのではないかと思いました。

その後、2010年1月にテレビをつけたところ、偶然にも自宅での出産場面でした。
赤ちゃんを最初に取り上げたのは医師ではなく母親でした。医師は出産に一切の手出しをせずに傍らで穏やかな表情で見守っていました。
赤ちゃんは産声をあげることもなく、母親は事前に説明を受けていたのでしょうか、医師の方をみて互いに頷き合い、カンガルー抱っこをしました。 見守っている周りの人々のほほえましい表情から赤ちゃんは健康で、映像からもそれが伝わってきました。

カンガルー抱っこされた赤ちゃんがとった行動

出産直後から目を閉じて穏やかな表情だった赤ちゃんは、顔を横向きにされ、両腕を横に伸ばされてカンガルー抱っこをされるとすぐに突然眼を開け、怪訝そうな表情をし、すぐにこわばった表情になりました。その表情は異変を感じ取ったような様子でした。

赤ちゃんは横向きだった顔をまっすぐ前に向き直し、額を上げて下顎を母親の胸に押し付け、首を強く伸ばしました。このとき口が開き、赤ちゃんの左胸のところに少し隙間ができました。
赤ちゃんの周りにいた人々は開いた口を見て、お乳を求めていると言っていました。
赤ちゃんは再び、同じことをしました。赤ちゃんの胸と母親の体との上下の隙間は更に広がりました。

赤ちゃんの下半身は毛布が掛けられていましたので、足元の様子は全くわかりませんでしたが、赤ちゃんはつま先で母親の体を強く押して圧迫された胸に隙間を作ったと私は思いました。
左胸に隙間を作った上体は、左腕を真横に伸ばした姿勢はつらいのでしょうか、赤ちゃん自身が肘を曲げて、結んでいた手を隙間ができた胸の方に向け安心したように眼を閉じ、穏やかな表情に変わりました。
母親が乳首を子の口に当てたわけでもなく、また、子が乳首を探し当てたわけでもないのに心臓のある左胸に隙間が出来ると安らかに眠り始めました。

この間、1分ほどの出来事ですが、赤ちゃんが一人で行った行動です。
赤ちゃんが口を開けた時、口元だけを見れば誰もがお乳を求めていると感じる光景でしたが、赤ちゃん抱っこそのものに疑問を持ち、全体の流れを通してみると、足を踏ん張って首を強く伸ばしたために自然に口が開いたと見るのが自然だと思います。

その後も偶然に出産直後の赤ちゃんのカンガルー抱っこの映像を見ましたが、赤ちゃんはすぐに目を開きこわばった表情を示しました。
出産直後の赤ちゃんにとって大切なことは、心臓を圧迫せず手足も自由に動かせるように仰向けに寝かせて、安心して眠れるようにするのが一番よいのではないかと思いました。

私は映像を見て、赤ちゃんが出産直後から胸を圧迫するような不自然な姿勢から体を守るために本能的に態勢を整えたり、首筋もしっかりしていることに驚きました。

医師に求められるものは何か

カンガルー抱っこを推奨する前に、体の構造・メカニズムからその是非を考えることが医師に求められるし、カンガルー抱っこをして異変が生じた赤ちゃんが発生しているなら、異変を知らせる器具を装着するという発想の前に、異変が生じる理由を考えることが医師に課せられた義務だと思います。
出産直後に無理にカンガルー抱っこをされて被害を受けた赤ちゃんが、あまりにもかわいそうでなりません。