母子関係最高裁判決について

母子関係最高裁判決の内容

PDF 判決文全文

昭和37年4月27日最高裁第二小法廷で母子関係に関する判決がありました。
裁判長裁判官は、藤田八郎、裁判官は、池田克、河村大助、奥野健一、山田作之助 です。

判決の主要部分は、次の通りです

         

所論は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を争うに帰し、採用するをえない。
なお、附言するに、母とその非嫡出子との間の親子関係は、原則として、母の認知を俟たず、分娩の事実により当然発生すると解するのが相当であるから、被上告人が上告人を認知した事実を確定することなく、その分娩の事実を認定したのみで、その間に親子関係の存在を認めた原判決は正当である。


判決文には、法律に基づく解釈が何一つとしてなく、裁判官の個人的な見解をただ述べているに過ぎません。

法律は、母子関係について分娩の事実のみで当然に発生するという規定にはなっていません。

出生届出という法律行為をすることにより母子関係が法律上確定し、出生届書中の子の父の欄を記載することにより、認知届出も兼ねるという規定になっています。

ところで皆さんは、最高裁判決から事実関係がわかりましたか。
どのような事実があったのか全くわかりませんね。

この最高裁判決は、問題点を多分に含んでいますので検証していきましょう。

判決書に記載すべき事項

昭和37年判決当時の民事訴訟法によると、第191条に判決書の記載事項が規定されています。

第191条
判決には次の事項を記載し、判決を為したる裁判官之に署名捺印することを要す。
 1.主文
 2.当事者及び法定代理人
 3.事実及び争点
 4.理由
 5.当事者及び法定代理人
 6.裁判所
事実及び争点の記載は口頭弁論における当事者の陳述に基き、要領を適示して之を為すことを要す。
裁判官判決に署名捺印するに支障あるときは、他の裁判官判決にその事由を記載して署名捺印することを要す。


判決書に記載すべき「事実及び争点の記載は口頭弁論における当事者の陳述に基き、要領を適示して之を為すことを要す。」に当たる部分が、判決文に記載されたのは「所論は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を争うに帰し、採用するをえない」です。

判決文は続けて、「認知した事実を確定することなく、その分娩の事実を認定したのみで、その間に親子関係の存在を認めた原判決は正当である。」と述べています。

判決書には、「理由」も記さなければなりません。
判決理由とは、Webサイトのブリタニカ国際大百科事典小項目事典によると、次のように説明されています。

判決理由
判決の結論 (判決主文) の前提となっている係争事実に関する判断。
適用する法の解釈を明らかにし,結論にいたる経路を示した部分。
判決には必ずこの判決の理由を示さなければならないとされている。


最高裁判決は、「適用する法の解釈、結論にいたる経路」が全く示されていません。

ところで判決文の「所論は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を争うに帰し、採用するをえない。」は、多くの判決文で目にしますが、重要な事実や法律解釈を省略して済ませる一種の手抜きの手法のようで、裁判官は常套句のようにして多用しています。

更にこの表現は、裁判の一方当事者を裁判官が高圧的に非難する態度を示していると同時に、憲法や法律に規定されている裁判官としての義務を果たしていないことを如実に示す表現ともいえます。

母子関係の事実

この判決をした藤田八郎裁判長は、判決について解説をしています。

藤田八郎裁判長の解説の全文 藤田八郎裁判長の解説の14ページ下段に記載されている事実関係とWebサイトの親子と法に記載されている事実関係を総合すると事実は次の通りですが、藤田裁判長の解説は、養子縁組した事実を省略しています。
養子縁組をした事実は実母でないことを自ら公に認めたことを証明するものです。
それを判決でも解説でも伏せたのは、判決に不都合な事実だったからでしょう。

事実関係図
  1. Aと愛人関係にあったXが、Yを出産しました。
  2. Xの養父母の反対で、Xは出生届出をすることができず、Yは養父母の知り合いの夫婦の嫡出子として出生届が出されました。
  3. YはXの養子になり、成人になるまでXのもとで育ちました。
  4. Aの家業をYが継ぐことになり、XとYは養子縁組を解消し、AC夫婦とYが養子縁組をしました。
  5. YがXとの親子関係を否定するようになったので、XはYとの親子関係存在確認を提訴しました。

法律上、出生届出をしなければ実母と認められません

最高裁は、「母の認知を俟たず、分娩の事実により当然発生すると解するのが相当」と述べていますが、実親子関係は、出生届出により戸籍に記載されない限り成立しないことは、戸籍法第49条により明らかです。

戸籍法第49条
(1)出生の届出は、14日以内(国外で出生があった場合は、3箇月以内)にこれをしなければならない。
(2) 届書には、次の事項を記載しなければならない。
   1.子の男女の別及び嫡出子又は嫡出でない子の別
   2.出生の年月日時分及び場所
   3.父母の氏名及び本籍、父又は母が外国人であるときは、その氏名及び国籍
   4.その他法務省令で定める事項
(3)記載省略。
(注) 第2項第4号の「その他法務省令で定める事項」は、戸籍法施行規則第55条に規定されています。


出生届出は義務付けられており、届出をすることにより法律上の実親子関係が成立します。
しかも届書には、嫡出子、非嫡出子の別をとわず、いずれの場合においても子の父及び母の氏名、本籍等を必ず記載しなければならない規定になっています。

母がする認知とは、出生届書に父の氏名、本籍を記載することです

認知については、民法第779条に規定されています。

民法第779条 認知
嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。


戸籍法第60条、61条、62条に、認知に関する規定があります。

第60条 任意認知
認知をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一 父が認知をする場合には、母の氏名及び本籍
二 死亡した子を認知する場合には、死亡の年月日並びにその直系卑属の氏名、出生の年月日及び本籍

第61条 胎児認知
胎内に在る子を認知する場合には、届書にその旨、母の氏名及び本籍を記載し、母の本籍地でこれを届け出なければならない。
(注)胎児認知の場合は、民法第783条により母の承諾を必要とする規定になっています。

第62条 準正子の嫡出子出生届による認知の効力
民法第789条第2項の規定によつて嫡出子となるべき者について、父母が嫡出子出生の届出をしたときは、その届出は、認知の届出の効力を有する。


戸籍法第60条「任意認知」の規定に、父が認知する場合の記載事項が規定されていますが、母が認知する場合については何も規定されていません。なぜでしょう。

上記の認知に関する各規定に共通している事項は、届出人は子の他方の実親を明らかにして届け出なければならない規定になっていることです。

したがって、母がする認知とは、出生届書に父の氏名及び本籍を記載することです。
出生届書が認知届書を兼ねているのです。

母と父の認知の届出書には、子の実両親の記載が一致していなければなりません。

民法第779条に「嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。」と規定されていますので、父がする認知は任意、母の場合も同様で、父の氏名や本籍の記載は任意ということになります。

藤田八郎裁判長の解説の検証

藤田八郎裁判長の解説の全文 藤田八郎裁判長の解説

藤田八郎裁判長の解説を通して、裁判官の独善的な考えにより判決されることがあることを、多くの人々に知っていただきたいと思います。

解説の14ページに次の記述があります。

解説の14ページ

文面から次の四点に着目して下さい。

  1. 従来の判決で認知説をとっていたのは、法文の字句に拘泥していたこと
  2. 当時の裁判所構成法の規定では、大審院が従前の判例と相反する判決をするためには聯合部を開いて審判しなければならず、聯合部の審判で多数をもって判例変更という結果に到達するか否かの見通しが容易に立たなかった実情が想像されること
  3. 新裁判所法では、判例変更が容易になったこと
  4. 果然、母の認知をまたず、分娩の事実により法律上の親子関係は当然発生するとの判決をした

さらに続けて15ページ上段最終行から次の記述がありました。

解説の15ページ

法律に規定されている条文が法改正によって変更されない限り、法律解釈は規定に基づいて判断することになりますので、判例変更などということはありえず、どちらかの裁判官の法律判断が誤り、あるいはいずれも誤った判断をしているということになります。

解説は、最高裁裁判官の判決は多数決でいかようにも決まり、裁判官の意のままになるという私意が、「果然」という言葉のニュアンスからも感じ取れますが、法曹界の判例を重視する体質はこのようなことが一因なのかもしれません。

解説で、法文上からは認知説を否定できない

解説15ページ下段に次の記述があります。

解説15ページ

解説で、判決文中の「原則として」と記述した理由説明

解説16ページ上段及び18ページ上段に次の記述があります。

解説16ページ及び18ページ

上記の説明は、藤田裁判長が棄子に関する規定を正確に理解していないことを示しています。

棄子については、戸籍法第57条及び第59条に規定があります。

第57条 棄子発見の場合
1.棄児を発見した者又は棄児発見の申告を受けた警察官は、24時間以内にその旨を市町村長に申し出なければならない。
2.前項の申出があつたときは、市町村長は、氏名をつけ、本籍を定め、且つ、附属品、発見の場所、年月日時その他の状況並びに氏名、男女の別、出生の推定年月日及び本籍を調書に記載しなければならない。その調書は、これを届書とみなす。

第59条 棄子引取りの場合
 父又は母は、棄児を引き取つたときは、その日から1箇月以内に、出生の届出をし、且つ、戸籍の訂正を申請しなければならない。


棄子は引取られることがないときは、実父母は不明のままであり、引取とられたときは、父又は母は出生届出をしなければなりませんが、届出にあたっては戸籍法第49条の規定が適用されることになります。
その場合第3項規定の書面を添付しなければなりませんので、通常の出生届出と変わりはありません。

第49条 出生届
1.記載省略
2.記載省略
3.医師、助産師又はその他の者が出産に立ち会つた場合には、医師、助産師、その他の者の順序に従つてそのうちの一人が法務省令・厚生労働省令の定めるところによつて作成する出生証明書を届書に添付しなければならない。ただし、やむを得ない事由があるときは、この限りでない。


非嫡出子の場合、出生届出という法律行為をするにあたり、分娩の事実はその証明資料です。
分娩の事実だけでは法律効果は生じず、出生届出という法律行為をすることによって、母子関係の法律効果が生じます。

最高裁判決文中の「原則として」を藤田裁判長の解説にあるように考えることはできないし、第三者が理解に苦しむような「原則として」という文言は安易に判決文に使用すべきでないと思います。

専門家は下記右側(解説18ページ下段)のように疑問を呈しています。

実親子関係に関する民法や戸籍法は、生物学上の親子関係を届出る規定になっていますが、出生届や認知届が限られた証明を基にして戸籍に記載された以上は、届出人からその無効や取消しを認めないという立法趣旨が民法や人事訴訟手続法に規定されていますので、分娩の事実を証明しても実親子関係の法律効果は生じません。

下記左側で藤田裁判長は、父子の認知は事実上のつながりが明らかな場合に認知の効力を有すると述べていますが、認知は届出により成立するのであって、父の認知と母の認知とで異なるところはありません。

解説18ページ

最高裁判決の裁判の当事者の主張は何であったのか

判決文の次の記述から、皆さんは裁判の当事者の主張は何であったと考えますか。

母とその非嫡出子との間の親子関係は、原則として、母の認知を俟たず、分娩の事実により当然発生すると解するのが相当であるから、被上告人が上告人を認知した事実を確定することなく、その分娩の事実を認定したのみで、その間に親子関係の存在を認めた原判決は正当である


私は判決文から、被上告人であるXが分娩の事実を証明して実親子関係を主張し、上告人であるYがXは認知していないから実親子関係は生じていない、と主張していると思っていました。

ところが藤田裁判長は、解説22ページの上段で次のように述べています。

解説22ページ

私は解説を読んで、藤田裁判長の考えているようなことは、事実に照らし法律上主張できることではなく、上告人は当初からそのようなことは全く念頭になかったと思います。

戸籍上ある夫婦の嫡出子になっているので、民法や戸籍法の規定により実親子関係は確定し、これを覆すことは絶対的にできないので、この事実を主張し続けていたと思います。

裁判官は証拠や当事者の主張のみて判断し、法律の規定を無視する判決も多いようで、この場合も下級裁判所裁判官は、当事者の主張の事実から、一方の事実を採用して判決したに過ぎないと考えられます。

判例を理由にする上告受理の申立ての現民事訴訟法規定の是非

判決当時の民事訴訟法によると第394条に上告理由の規定があります。

第394条 上告理由
上告ハ判決ニ憲法ノ解釈ノ誤アルコト其ノ他憲法ノ違背アルコト又ハ判決ニ影響ヲ及ボスコト明ナル法令ノ違背アルコトヲ理由トスルトキニ限リ之ヲ為スコトヲ得


藤田裁判長は解説で「原判決は大審院以来の判例に違反するという主張がされていない」といっていますが、法曹界の慣例ではそうかもしてませんが、民事訴訟法の規定では上告理由に該当しません。

この事件の場合、原審の裁判官は憲法第76条第3項で法律に拘束されているにもかかわらず、判決は法律の規定に反しているという理由で、上告理由は憲法違背になると思います。

藤田裁判長は、憲法や法律よりも判例を重視し、それに固執する裁判官であったと思われます。

平成8年に新民事訴訟法が制定され、平成10年に施行されました。
新法は「第312条上告の理由」と「第318条上告受理の申立て」の二種類の方法が規定されています。

第312条 上告の理由
1.上告は、判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、することができる。
2.以下記載省略


第318条 上告理由の申し立て
1.上告をすべき裁判所が最高裁判所である場合には、最高裁判所は、原判決に最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは控訴裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある事件その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件について、申立てにより、決定で、上告審として事件を受理することができる。
2.前項の申立て(以下「上告受理の申立て」という。)においては、第312条第1項及び第2項に規定する事由を理由とすることができない。
3.第1項の場合において、最高裁判所は、上告受理の申立ての理由中に重要でないと認めるものがあるときはこれを排除することができる。
4.第1項の決定があった場合には、上告があったものとみなす。この場合においては、第320条の規定の適用については、上告受理の申立ての理由中前項の規定により排除されたもの以外のものを上告の理由とみなす。
5.第313条から第315条まで及び第316条第1項の規定は、上告受理の申立てについて準用する。


第318条第1項の規定は、法曹界において判例がいかに重視されているかを示すもので、判例法なるものが憲法や法律の規定よりも最重視される所以と思いますが、判例が憲法や法律に違背しているかどうかを検証することなく盲目的に引用して判決しているのが実態です。

憲法第76条3項で裁判官は憲法及び法律にのみ拘束されているのですから、判例を引用すべきではなく、第318条の「上告理由の申し立て」は不要の規定と思います。

解説で、判決文中の「なお、附言するに」と記述した理由説明

解説21ページ下段に次の記述があります。

解説21ページ

附言として付け加えた判決文には、法律上の解釈が一切ありません。

裁判の当事者は、正当であるか否かを法に照らして事実を主張しているのですから、裁判官はあらゆる事実を総合して法律解釈し、法に基づいた判断をする義務があります。

解説を読むと下級審は法律解釈を全くしないで分娩の事実のみで実親子関係があると判決し、最高裁は当事者が全く主張していない認知の有無を持ち出して、法律の規定に反して「母の認知を俟たず、分娩の事実により当然発生すると解する」とあえて判決文中に加えたことは、最高裁裁判官が憲法や法律を正しく理解していないことを示したといえます。

附言を付け加えたことについて、裁判長は解説の最終ページで次のように述べています。

解説最終ページ

子の出生によりどのような法律上の手続きが行われ、どのような法律効果が生じたか、それが真実に反していた場合、真実に変更できる規定があるかどうか、これらを順に法律に規定されている条文を読みこなしていけば、解説にあるような自己弁護や正当性を強調する主張はできないはずです。

昨今は社会に関心のある判決があるとメディアで取り上げられることがありますが、私が今でも記憶にあるのは、元検事の弁護士が「裁判官がどのような判断をするのか、裁判はやってみないとわからない」と発言したことです。

裁判官の独善的な判断が判決に反映される現状が、このような発言になるのでしょう。

法務省民事局長回答は、誤っています

解説19ページ上段に民事局長回答が掲載されています。

解説19ページ

戸籍法第52条第3項、第4項に、出生届出ができない母に代わって届出る義務者を規定しています。

戸籍法第52条 届出義務者
1 嫡出子出生の届出は、父又は母がこれをし、子の出生前に父母が離婚をした場合には、母がこれをしなければならない。
2 嫡出でない子の出生の届出は、母がこれをしなければならない。
3 前2項の規定によつて届出をすべき者が届出をすることができない場合には、左の者は、その順序に従つて、届出をしなければならない。
第1同居者
第2出産に立ち会つた医師、助産師又はその他の者
4 第1項又は第2項の規定によつて届出をすべき者が届出をすることができない場合には、その者以外の法定代理人も、届出をすることができる。


戸籍法第37条第2項に「届出人が疾病その他の事故によって出頭することができないときは、代理人によって届出をすることができる。」という規定がありますが、届出人が届書に記載し、出頭のみ代理人が行う旨の規定です。

出産後に意識不明や死亡により母が出生届書を記載できない場合や父が行方不明の場合が、戸籍法第52条第3項、第4項の規定に該当すると思われます。

この場合に届出る者は、出生届書の記載事項のうち母のみが知っている子の父の氏名や本籍は記載できません。

それについては戸籍法第54条第2項に、父未定の子の出生届としてその事由を記載しなければならないと規定されています。

民法第773条 父を定めることを目的とする訴え
 第733条第1項の規定に違反して再婚をした女が出産した場合において、前条の規定によりその子の父を定めることができないときは、裁判所が、これを定める。


戸籍法第54条 父未定の子の出生届
1 民法第773条の規定によつて裁判所が父を定むべきときは、出生の届出は、母がこれをしなければならない。この場合には、届書に、父が未定である事由を記載しなければならない。
2 第52条第3項及び第4項の規定は、前項の場合にこれを準用する。


非嫡出子の場合、母が出生届出をすることができないために代わりに出生届出をする者は、父の欄は未定である事由を記載することになり、後に父を定めるときは、「父を定めることを目的とする訴え」をすることになります。

民事局長回答の「母が明らかなる以上、母において認知する必要なき」とありますが、これは誤っています。

母がする認知とは、出生届書に子の父を記載することであり、記載されていれば後に父からの認知届出や子らからの認知の訴えができます。
父の記載がないと、父からの認知届出や子らからの認知の訴えができません。
民事局長回答の「認知の必要なき」とは、法律に規定されていません。

「母以外の届出義務者より母の氏名を記載して私生子出生届をしたときは、母の認知なくともその私生子との間に当然に親子関係が生じる」は、当然ですが、それは出生届出がされたからです。

民事局長の回答全体からは、法律上の母子関係が成立する時期、認知の法律上の意味、母が認知した場合に生ずる後の効果、母が出生届出ができない場合の出生届出書の記載要領等、それぞれについての法律の規定の理解が欠けていることがわかります。

 ま と め (法律上の認知とは)

母子関係について、分娩説、認知説の論争は、ナンセンスです。

  1. 自然懐胎の場合、分娩により母子関係は発生しますが、法律上の母子関係は成立していません。
  2. 法律上の母子関係を成立させるためには、出生届出をしなければなりません。
  3. 出生届書に子の父を明らかにした場合、母は法律上の認知届出もしたことになります
  4. 母が出生届出ができない場合に届け出る者は、子の父の欄に記載できない事由を記載しなければなりません。
  5. この場合、認知届出や認知の訴えはできず、父を定める訴えをすることになります。
  6. 母が届け出た出生届書を閲覧できる者は、厳しい制限がありますので、母は出生届書に子の父を明らかにして認知の届出もしておいたほうが良いでしょう。
  7. 母が出生届書に子の父を明らかにしていないときは、父から認知届出はできないし、子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えが提起できないことになります。
  8. なぜなら、母及び父の双方において、子の実両親の届出事項が一致していなければならないからです。
  9. 子が非嫡出子であっても母が認知していれば、父が認知し、父母が婚姻した時、民法第789条により子は嫡出子の身分を取得します。

戸籍法第48条第2項に「届書等の閲覧」に関する規定があります。

第48条
1 届出人は、届出の受理又は不受理の証明書を請求することができる。
2 利害関係人は、特別の事由がある場合に限り、届書その他市町村長の受理した書類の閲覧を請求し、又はその書類に記載した事項について証明書を請求することができる。
3 記載省略


第789条 準正
1 父が認知した子は、その父母の婚姻によって嫡出子の身分を取得する。
2 婚姻中父母が認知した子は、その認知の時から、嫡出子の身分を取得する。
3 前2項の規定は、子が既に死亡していた場合について準用する。