1.医原病解明の必要性

顎関節症の発症原因は歯科医師による医療過誤が原因なので、顎関節症は医原病です。
顎関節が偏位するとそこを起点として四方八方へとなだれ込むようにして全身の細胞のメカニズムを乱していきます。顎関節症は万病のもとです。
自然科学の論理なき医療行為は新たな病気の発症を招き、病因の解明をしないままに病巣を治療する行為は種々の新たな医原病の発症につながり患者を苦しめていきます。

2.三権の法解釈の誤りによる違法行為を国民が指摘する必要性

実親子関係に重大な影響を及ぼす出生届出や衆議院解散等、三権(国の統治権の立法権、司法権および行政権)の誤った判断や恣意的な法解釈による違法行為は、法治国家を否定する行為です。
国民は憲法や法律の規定、法令用語の常識を根拠にその誤りを指摘して、国民の力で法治国家を守り秩序ある社会にしていきましょう。

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10.日本学術会議6人の会員任命拒否は法律違反

菅総理大臣に日本学術会議の推薦会員任命拒否権はありません

日本学術会議は、会員105人を選考し菅内閣総理大臣に推薦したところ、菅総理は内6人を除く99人を10月1日に会員に任命したため多くの人がこれについて意見を述べています。

菅総理は10月2日に会見で、日本学術会議の会員候補の任命を拒否した問題について「法に基づいて適切に対応した結果だ」と述べました。

10月5日の会見では、「日本学術会議は法律にもとづいて内閣法制局の確認のもとで、学術会議の推薦者のなかから、首相として(会員を)任命している。 政府の機関であり、年間約10億円の予算で活動している。任命される会員は、公務員の立場だ」と説明しました。

会員の人選は推薦委員会などの仕組みがあるものの、「現状では事実上現在の会員が自分の後任を指名することも可能な仕組みとなっており、推薦された方をそのまま任命して来た前例を踏襲してよいのか考えてきた」と釈明しました。

さらに「日本学術会議については、省庁再編の際、そもそもその必要性を含めてその在り方について相当の議論が行われ、その結果として総合的、俯瞰的活動を求めることにした。
まさに総合的、俯瞰的活動を確保する観点から、今回の人事も判断した。このようなことを今後も丁寧に説明していきたい」と強調しました。

10月9日の会見で菅総理グループインタビュー(毎日・朝日・時事)で次のように述べました。
首相は「最終的に決裁したのは9月28日で、決裁時に最終的に会員になった人がそのままリストになっていたと説明し、推薦段階のものを見ていない」と述べました。

「会員任命にあたり候補者の思想・信条は影響しないとも発言した。6人を改めて任命するか問われて「今回の任命手続きは終了した。変更するとは考えていない」と明言しました。

10月28日の衆院本会議で菅総理は次のように答弁しました。
「民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りが見られることを踏まえ、多様性が大事だという前提に私が任命権者として判断した。今回の任命について、変更するということは考えていない」

「憲法第15条第1項は公務員の選定は国民固有の権利と規定している」とし、「「日本学術会議の会員についても必ず推薦の通りに任命しなければならないわけではないという点については、内閣法制局の了解を得た政府としての一環した考え」と述べています。

11月4日の衆院予算委員会で菅総理は次のように答弁しました。
「官房長官当時の8月31日に105人の推薦名簿が提出された際と、9月16日の首相就任後の2回、会議への懸念などについて加藤勝信官房長官や杉田氏を通じて内閣府に伝えた。
内閣府は24日に99人の決裁案を起案し、首相は28日に決裁した。」

菅総理の一連の発言は、菅総理ご自身が法律を正しく解釈できないこと、法解釈については「内閣法制局」が関与し菅総理は内閣法制局を頼りにしていること、内閣府は平成17年内閣府令第93号「日本学術会議会員候補者の内閣総理大臣への推薦」を公布していたことなどが今回の問題の原因と思います。

6人を任命からはずしたのは誰かとか、あるいは過去の政府答弁や法解釈と対比して追求するのは無駄なことです。

なぜならそのようなことを繰り返し追求しても過去の政府答弁や法解釈が、憲法や法律の規定する文言に基づいてなされた発言であったかどうか疑問であり、政府が公開しない書面があったりするからです。

国民にとって重要なことは、過去においても現在においても憲法や法律に規定されている文言の解釈を基準にして発言しない限り、同じことを何度も言葉を変えて追及しても政府の回答は憲法や法律の規定から離れた空疎な回答に終始し、いつまでたっても政府の違法性や内閣法制局の誤った解釈を論理的に指摘することに結びつかないからです。

菅総理や加藤官房長官に対して、会員任命に関連する法律の規定に基づいて如何に法律を正しく解釈していないかを指摘して政治家の責任を厳しく追及していき、ひいては立法府に携わる国会議員としての資質を有しているかを判断した上で国民は公務員罷免権を行使していくことが重要と思います。
法律の条文に基づいて順に検証していきましょう。

検証1:ある役目に就くには、「1.選ばれること」と「2.役目につくことを命じられること」の2段階の手続きを経ることが憲法や法律で規定されていることがわかります。

選ばれただけではその役目に就くことはできず、任命権者によって任命されて正式にその役目に就くことになります。

「任命」は何を意味しているかを考えなければなりません。
選任された者がその業務を開始できるのは「任命された日」が起点になることを明らかにしているのです。

憲法や法律は「選任」と「任命」を明確に区別していることから任命権者には「選任権」はなく、選任機関からの名簿通りに任命することが求められています。
すでに「選任されている者」に対しさらに任命権者に「選任権」を与えると、任命権者の恣意的な判断を許すことになり強権力を与えることになります。

なぜなら任命権者は「機関ではなく」、「一人の人間」だからです。

日本学術会議の場合、任命権者は人選ができないのに内閣府が人選を行い、その人選に基づいて菅総理が任命した行為は法律違反です。

平成17年内閣府令第93号「日本学術会議会員候補者の内閣総理大臣への推薦手続を定める内閣府令」が公布されています。

平成17年内閣府令第93号
日本学術会議会員候補者の内閣総理大臣への推薦手続を定める内閣府令

日本学術会議法(昭和23年法律第121号)第17条の規定に基づき、日本学術会議会員候補者の内閣総理大臣への推薦手続を定める内閣府令を次のように定める。
日本学術会議会員候補者の内閣総理大臣への推薦は、任命を要する期日の30日前までに、当該候補者の氏名及び当該候補者が補欠の会員候補者である場合にはその任期を記載した書類を提出することにより行うものとする。

附 則
この府令は、平成17年10月1日から施行する。

この内閣府令を公布したのは、小泉純一郎元総理大臣です。

小泉純一郎元総理大臣在任期間

上記のような内閣府令は有効でしょうか? 内閣府設置法で確認してみましょう

内閣府設置法

(内閣総理大臣の権限)
第7条 内閣総理大臣は、内閣府の事務を統括し、職員の服務について統督する。
2 内閣総理大臣は、内閣府に係る主任の行政事務について、法律又は政令の制定、改正又は廃止を必要と認めるときは、案をそなえて、閣議を求めなければならない。
3 内閣総理大臣は、内閣府に係る主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、内閣府の命令として内閣府令を発することができる。
4 内閣府令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができない。
5 内閣総理大臣は、内閣府の所掌事務について、公示を必要とする場合においては、告示を発することができる。
6 内閣総理大臣は、内閣府の所掌事務について、命令又は示達をするため、所管の諸機関及び職員に対し、訓令又は通達を発することができる。
7 内閣総理大臣は、第三条第二項の任務を遂行するため政策について行政機関相互の調整を図る必要があると認めるときは、その必要性を明らかにした上で、関係行政機関の長に対し、必要な資料の提出及び説明を求め、並びに当該関係行政機関の政策に関し意見を述べることができる。

「候補者」の意味は、「 候補に挙げられた人。選択の対象となる人」です。

国民はあらゆることを知る権利があります。政府に不都合な意見も国民は知る権利があり、国民は一人一人が多くの情報から考える必要があります。

内閣設置法第7条3項「内閣総理大臣は、内閣府に係る主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、内閣府の命令として内閣府令を発することができる。」と規定されていることから、平成17年内閣府令第93号の「候補者」と「当該候補者が補欠の会員候補者である場合にはその任期を記載した」の箇所は法律に違反しているので、当該内閣府令は効力を生じません。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によると政令と省令の優劣関係は次の通りです。

省令は、日本国憲法・条約・法律・政令に劣後し、内閣府令、復興庁令および人事院規則と同等の効力を有する
憲法 >条約 > 法律 > 政令 > 内閣官房令 = 内閣府令 = 復興庁令 = 省令 = 外局の規則(規則・庁令)>各地方自治体の条例>地方公共団体の規則

検証2:具体例として総理大臣と国務大臣の「1.選任」と「2.任命」を憲法の規定で確認してみましょう

総理大臣の「選任」と「任命」は、憲法第67条が「選任」についてで、第6条が「任命」について規定されています。

国務大臣については、憲法第68条により内閣総理大臣が「任命する」と規定しています。
内閣総理大臣は国務大臣を指名し直ちに「任命」ができることになります。

国務大臣の任命は憲法7条により天皇が任命する規定になっているのに、なぜ第68条で総理大臣が国務大臣を「指名」ではなく「任命」と規定しているのか、また、国務大臣が2度も任命を受けることに皆さんは疑問に思いませんか。

その理由は、国務大臣が天皇の任命を受けるには、第3条及び第7条の「内閣の助言と承認により」と規定されているために事前に内閣が成立していなければならないからで、そのためには「役に就くことを命じられて」いなければなりません。

正式な内閣の成立は天皇の任命後になりますが、国務大臣の「指名」は選任機関がないので内閣総理大臣が「指名」と「任命」を同時に行うことによって国務大臣は内閣の一員として天皇の国事行為の助言と承認をする権限があることを明らかにしているのです。

内閣総理大臣の「選任」と「任命」についての憲法の規定は次の通りです。

第67条(内閣総理大臣の指名、衆議院の優越)
内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。
○2 衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

第6条(天皇の任命権)
天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
○2 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

国務大臣の「選任」と「任命」に関する憲法の規定は次の通りです。

第68条 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
○2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。

第3条(天皇の国事行為に対する内閣の助言と承認)
天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。

第7条(天皇の国事行為)
天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行ふこと。

検証3:内閣府日本学術会議事務局の内部文書について

政府は10月6日、行政権や公務員任命権を定めた憲法の条文を根拠にして、内閣総理大臣が日本学術会議の推薦通りに任命する義務はないと確認した平成30年(2018年)11月13日付の「内閣府日本学術会議事務局」の内部文書を公表しました。

内部文書中「3. 日学法第7条第2項に基づく内閣総理大臣の任命権の在り方について」を下記に抜粋しました。赤ラインと※印は当ホームページ作成者が加筆しました。

 内部文書3項目目

内部文書から内閣府は憲法を正しく解釈できないということがわかります。検証してみましょう。

※2の「憲法第15条第1項の規定に明らかにされているところの公務員の終局的任命権が国民にあるという国民主権の原理からすれば、任命権者たる内閣総理大臣が、会員の任命について国民及び国会に対して責任を負えるものでなければならないことからすれば、 内閣総理大臣に、 日学法第17条による推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えないと考えられる。」は、まず憲法第15条1項の解釈が誤っています。

1.公務員の選定は「国民固有の権利」であって、内閣総理大臣等は選定を国民に代わって行使する権利はありません。

内閣府は憲法第15条の1項のみで上記のような結論を導き出していますが、思慮が浅すぎます。
2項以下も含めて15条全体を解釈すべきで国民固有の公務員選定権とは、3項及び4項に規定する普通選挙の場合に限ります。
「罷免権」は、2項の「すべての公務員は全体の奉仕者」であるから、「公務員という地位にある者に問題があれば何らの制限もなく罷免できること」は国民固有の権利ということになります。

したがって、日本学術会議の会員選定権は国民にありませんので、内閣府解釈の「公務員の終局的任命権が国民にあるという国民主権の原理」の概念は成立しません。
「内閣総理大臣の任命は国民及び国会に対して責任を負えるもの」という重責を憲法は内閣総理大臣に与えていません。

※1で憲法第65条及び第72条を根拠に「内閣総理大臣が会員の任命権者として、日本学術会議に人事を通じて一定の監督権を行使することができる」と述べていますが、内閣総理大臣の職務や行政権について憲法の規定は次の通りです。

 

第72条(内閣総理大臣の職務)
内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。

第65条(行政権)
行政権は内閣に属する。

 
 

第65条により内閣総理大臣は単独で行政権を行使できませ ん。
内閣総理大臣の職務の一つである「行政各部を指揮監督する」の「指揮」の意味は、「全体がまとまりをもって動くよう、人の上に立って指図をすること。」であり、それを監督することなので、憲法は内閣総理大臣に行政各部に対してまとまりをもって動くよう指図し監督する権限のみしか与えていません。

内閣法の第4条から第8条までにも内閣総理大臣の職務について次の通り規定しています。

第4条 内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとする。
2 閣議は、内閣総理大臣がこれを主宰する。この場合において、内閣総理大臣は、内閣の重要政策に関する基本的な方針その他の案件を発議することができる。
3 各大臣は、案件の如何を問わず、内閣総理大臣に提出して、閣議を求めることができる。

第5条 内閣総理大臣は、内閣を代表して内閣提出の法律案、予算その他の議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告する。

第6条 内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。

第7条 主任の大臣の間における権限についての疑義は、内閣総理大臣が、閣議にかけて、これを裁定する。

第8条 内閣総理大臣は、行政各部の処分又は命令を中止せしめ、内閣の処置を待つことができる。

憲法に基づく内閣法も内閣総理大臣が個人的な見解に基づいて職務を行う権限を全く与えていないことがわかります。
なぜだと思いますか?

内閣総理大臣は数百名の国会議員によって選出されますが、与党と野党の数の論理、政党の中では様々な利害が働くなどして内閣総理大臣が指名されます。

国民不在で決まる内閣総理大臣に強権を与えることは民主主義の原則から許されませんので、憲法は内閣総理大臣に個人的な判断に基づいて職務を行うことを認めていないのです。

繰り返しになりますが、憲法と内閣法に規定されている内閣総理大臣の職務を列挙すると次の通りです。
内閣総理大臣という資格の先入観から受ける印象と実際に行える職務は、天と地の差があることに気づいていただきたいと思います。

  1. 内閣を代表して議案を国会に提出すること
  2. 一般国務及び外交関係について国会に報告すること
  3. 閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督すること
  4. 内閣総理大臣は、内閣の重要政策に関する基本的な方針その他の案件を発議すること
  5. 主任の大臣の間における権限についての疑義は、内閣総理大臣が、閣議にかけて、これを裁定すること
  6. 行政各部の処分又は命令を中止せしめ、内閣の処置を待つことができる

以上から内閣総理大臣は日本学術会議からの推薦会員を任命するにあたり人選をする権限はなく、推薦会員全員に役に就くよう命じることが内閣総理大臣の職務です。

2.※3について、日本学術会議が選任し推薦した会員は「候補者」ではありません。

3.※4について、内閣総理大臣には人選権がありませんので任命定数を超える推薦会員を日本学術会議に求める権利はありませんし、日本学術会議は定員を超えて内閣総理大臣に会員を推薦することもできません。

1983年5月12日の参院文教委で答弁に立った中曽根首相(当時)は、政府が行うのは「形式的任命にすぎません」と断言されました。この考えは正しいでしょうか。

「任命」は「形式的」というような軽いものではありません。
総理大臣や国務大臣が天皇から任命を受けてその役に就くことができるのと同じで、日本学術会議の推薦会員は内閣総理大臣の任命によってその職務に就くことができるので、任命権者による「任命」はとても重要な役目です。

検証4:内閣法制局の役割は何ですか?

元東京高検検事長黒川弘務氏の勤務延長について 近藤正春内閣法制局長官が法務省に対し、検察庁法第22条に検事総長を除く検察官は年齢が63年に達した時に退官すると規定されているにもかかわらず退官日以降も勤務延長ができる旨の回答をしたことや、日本学術会議に関する野党ヒアリングに出席した内閣法制局の下記発言を聞くと、内閣法制局は「行政府内では、内閣法制局が政府の活動の法的妥当性を担保する役割を担うことから法の番人とされる。」と言われるような責任ある義務を果たしているのか疑問に思います。

むしろ政府と一体になって政府の意向に沿うような法解釈を構築し、国全体に無用な論争とそれに伴う時間を浪費しているように思います。

日本学術会議任命裁量に関する野党合同ヒアリングによると内閣法制局は次のように発言しています。

野 党:解釈の変更ではないということですね?では法制局はどうですか?
法制局:変更ではありません。憲法15条にもありますように公務員の終局的な任命権は国民にあって、公務員の特別職公務員たる日学会員の…(ヤジ)…国民の憲法15条に基づく公務員の任免権を内閣総理大臣が請け負ってやっていて、その関係において内閣総理大臣が最終的に国民に対する責任を負っていると、その責任を負っている範囲の中で任免権を行使するわけですから、その責任を負えないような任免権は行使できないというのは、ずっと一貫している考えであって、その前提のもとに58年の答弁もなされているということになっている。

内閣法制局の回答は上記内閣府が公開した内部文書通りの説明をしています。
当然といえば当然ということになるのでしょうが、内閣府は内閣法制局の法解釈に基づいて行政を行っていることがわかります。

内閣法制局が政府の思い通りになるような法解釈を構築し、それを根拠にして政治が行われることは由々しきことです。

国民としては東京高検検事長勤務延長や日本学術会議推薦会員任命で表面化した事実から、内閣法制局は法規の正しい解釈ができないことがわかりましたので今後は内閣法制局にも注意を払う必要があると思います。

検証5:百地章憲法学者の発言を聞いて疑問

百地章憲法学者は、NHKニュースで次のように述べました。
「結論的には任命拒否はあり得ると考えている。菅総理大臣はいろいろなバランスとか総合的に考えたと言っており、総理大臣の任命権は、学術会議の推薦に拘束されるものではなく、ある程度の自由裁量はある。法律の解釈は変わらない。運用で少し変化が出たと私は理解している。」

憲法学者は憲法の条文にはとりわけ熟知していると考えますが、百地氏の発言は憲法第72条(内閣総理大臣の職務)規定の解釈を誤っていると思います。

内閣総理大臣の任命権は、学術会議の推薦に拘束されますので裁量権はありません。

検証6:山極寿一日本学術会議前会長発言から国民が問題視すべきことは

山極寿一日本学術会議前会長は、NHKニュースで次のように述べました。
「今回の件よりも2年前、定年によって会員の補充が必要になった時に、学術会議側が検討していた候補の名前を伝えたところ、官邸から難色が示され、この時も理由が示されなかった」ということで、当時の経緯を詳細に語りました。
山極前会長は、「学術会議で議論をし直す場合は理由が必要なので、『理由を教えて下さい、そのために官邸に出向きます』と、杉田官房副長官に事務局を通じて何度も申し上げたが、『来る必要はない。理由も言うつもりはない』とそれ一辺倒なので非常に困りました」と語り、最終的には欠員とせざるを得なかった状況を語りました。

日本学術会議法第7条には、第1項に「210人の日本学術会議会員(以下「会員」という。)をもつて、これを組織する。」と規定され、第4項には「補欠会員」の任期についても規定されています。

規定に従うと日本学術会議から補欠会員の推薦があった場合に、内閣総理大臣は任命しなければならないのにその者について官邸が任命しないというならその理由説明を忌避することは許されません。

ところでこの推薦は安倍総理大臣(当時)に伝わっていて、任命しないというのは安倍総理大臣の意向だったのでしょうか、それとも安倍総理大臣には伝わらず、菅官房長官の意向だったのでしょうか?
補欠推薦名簿が安倍総理大臣に届いていなかった場合、菅官房長官の独断ということになり責任は重いです。

官邸のこのような任命を拒否する理由を説明しないという傲慢な態度を国民は許してはいけません。

 ま  と  め

日本学術会議は提出期限を守って内閣総理大臣に推薦会員名簿を提出しているのですから、任命期日までに推薦会員全員を任命しなかった菅内閣総理大臣の法律違反を国民は許してはいけません。

内閣総理大臣と日本学術会議間の問題ではなく、安倍前総理大臣の下で菅前官房長官が東京高検検事長勤務延長を法務省、内閣法制局、人事院を巻き込んで規定に反する解釈をし閣議決定して黒川東京高検検事長を勤務延長させ、さらに菅前官房長官は、「行政府が法律を解釈変更した時の周知の必要性について、国民生活など への影響を踏まえ、必要に応じた周知が行われることはあるが、一概に答えられない。検察官の人事制度のことで国民への周知の必要はなかった」と述べて国民を軽視する態度であったことを振り返ると、今回も同じパターンです。

このことは政治家が主権在民の国民を軽視し、内閣の意図する政治を強引に行おうとする悪質な行為に他なりません。

東京高検検事長の勤務延長も日本学術会議推薦会員の内閣総理大臣による任命も法改正がなかったにもかかわらず、過去の発言や考え方と対比したり、解釈変更したのかしないかの政治家同士の空疎な発言が連綿と続くことにうんざりします。

このような現象は、政治家や内閣法制局などの官僚が関連する憲法や法律の規定の正しい解釈ができないことが原因です。

今回のような問題が発生したときに国民は憲法や法律の規定の条文を読んで知識を深める機会にし、なぜ東京高検検事長勤務延長や日本学術会議推薦会員6名の任命拒否が憲法や法律に違反するかを知ることによって、政治家の法律違反を糾弾し、今後、政治家の身勝手な解釈で政治が行われないようにしないと日本はますます無法国家になっていきます。

日本学術会議法第7条第1項に「210人の日本学術会議会員(以下「会員」という。)をもつて、これを組織する。」と規定されていますので、現時点で210名を満たしていない状態にした菅総理大臣の責任は重いです。