1.医原病解明の必要性

顎関節症の発症原因は歯科医師による医療過誤が原因なので、顎関節症は医原病です。
顎関節が偏位するとそこを起点として四方八方へとなだれ込むようにして全身の細胞のメカニズムを乱していきます。顎関節症は万病のもとです。
自然科学の論理なき医療行為は新たな病気の発症を招き、病因の解明をしないままに病巣を治療する行為は種々の新たな医原病の発症につながり患者を苦しめていきます。

2.三権の法解釈の誤りによる違法行為を国民が指摘する必要性

実親子関係に重大な影響を及ぼす出生届出や衆議院解散等、三権(国の統治権の立法権、司法権および行政権)の誤った判断や恣意的な法解釈による違法行為は、法治国家を否定する行為です。
国民は憲法や法律の規定、法令用語の常識を根拠にその誤りを指摘して、国民の力で法治国家を守り秩序ある社会にしていきましょう。

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11.佐川元理財局長の賠償責任を認めない判決は、法理上当然です

財務省文書改ざんを指示した佐川氏の損害賠償責任を認めない判決は妥当

森友学園に関する財務省の決裁文書の改ざんに関与させられて自殺した近畿財務局の職員、赤木俊夫さんの妻は、国と佐川宣寿 元理財局長に賠償を求める民事裁判を起こしました。2022年11月25日に大阪地裁は佐川氏に損害賠償責任はないとして請求を棄却しました。

佐川氏の損害賠償責任を認めない判決

検証1:国家賠償法は損害賠償責任を公務員に認めていませんが、国又は公共団体はその公務員に対して求償権を有すると規定しています

国家賠償法(昭和二十二年法律第百二十五号)

第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体 が、これを賠償する責に任ずる。
前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

第二条 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
② 前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する

第三条 前二条の規定によつて国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において、公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる。
② 前項の場合において、損害を賠償した者は、内部関係でその損害を賠償する責任ある者に対して求償権を有する

第四条 国又は公共団体の損害賠償の責任については、前三条の規定によるの外、民法の規定による。

第五条 国又は公共団体の損害賠償の責任について民法以外の他の法律に別段の定があるときは、その定めるところによる。

第六条 この法律は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、これを適用する。

赤木さんの損害賠償請求権は1個と思っていましたのでこの裁判は「国」と「佐川氏」を連帯債務者とする1件の裁判が提訴されたものと私は思っていました。
ところが森友改ざん裁判"元理財局長の責任認めず判決を受けて解説を見ると、「国」に対しては「1億700万円」の損害賠償請求、「佐川氏」に対しては「1650万円」の損害賠償請求するという2件の裁判が提訴されていたことを知りました。
赤木さんが有する損害賠償請求権は1件のはずなのにこのように2件提訴することは可能なのでしょうか。

検証2:国家賠償法第1条の規定の趣旨

国家賠償法第1条1項で公務員に損害賠償責任を規定しないのは、国や公共団体は組織で成り立っており、集団や機構の秩序を維持するために規律は重要で部下は上司の業務上の指示に従わざるを得ません。
従って、財務省の決裁文書の改ざんを赤木さんに命じた直属の上司は必ずしも損害金の負担を負うとは限りません。

公務員に故意又は重大な過失があつたときは、損害賠償金を公金で負担する義務はないので第2項で国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有すると規定し最終的にはその公務員が全額負担することになります。

裁判が確定したら国は内部調査をした上で改ざんすることを最初に命令した人物に求償権を行使するのが筋で、佐川氏は赤木さん同様組織の中においては被害者という立場になるのかもしれません。

検証3:1650万円は1億700万円の中に含まれているのではないですか

国家賠償法第1条に「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは」と規定していますので、1億700万円の中に佐川氏に提訴した1650万円は含まれていることになり請求は一部重複することになるのではないですか。

検証4:公務員は損害賠償責任を負わないと皆が言う最高裁判例について

法律の専門家をはじめとして世間は「公務員は損害賠償責任を負わないという最高裁判例がある」と話しています。
果たして最高裁は昭和30年4月19日にそのように判決していたのでしょうか。最高裁判決文は下記の通りです。

 

主    文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。

理    由
上告代理人野尻昌次の上告理由第一点について。
所論について判断するに先だち、職権をもつて上告人等の本訴請求中、被告熊本県知事が昭和2年11月15日に為した熊本県球磨郡D農地委員会解散処分の無効確認を求める部分について調べてみるに、農地調整法に基づく農地委員会は、農業委員会法(昭和26年3月31日法律第88)の施行により、同法附則2項の経過的存続期間の終了とともに廃止されることとなり、市町村については昭和26年7月20日の選挙により農業委員会が成立すると、同時に農地委員会は消滅したことは、顕著な事実であるから、上告人等は、本件農地委員会についてもはや本訴により解散処分の無効確認の判決を求める利益を有しないのである。従つてこの部分に関する原判決は結局正当に帰す。

よつて所論の農地調整法施行令28条の4が違憲違法なりという主張は、前記無効確認を求める訴の前提たる理由に過ぎないから、判断をするかぎりでない。

次に上告人等の損害賠償等を請求する訴について考えてみるに、右請求は、被上告人等の職務行為を理由とする国家賠償の請求と解すベきであるから、国または公共団体が賠償の責に任ずるのであつて、公務員が行政機関としての地位において賠償の責任を負うものではなく、また公務員個人もその責任を負うものではない。

従つて県知事を相手方とする訴は不適法であり、また県知事個人、農地部長個人を相手方とする請求は理由がないことに帰する。

のみならず、原審の認定するような事情の下においてとつた被上告人等の行為が、上告人等の名誉を毀損したと認めることはできないから、結局原判決は正当であつて、所論は採用することはできない。

同第二点及び第三点について。
所論中第一点について判断した部分を除き、その他の主張は、要するに原審の事実認定を非難するか、または独自の見解に立つて原審の判断を攻撃するに過ぎず「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和25年5月4日法律138号)1号乃至3号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

よつて、本件上告を棄却すべきものとし、民訴401条、95条、89条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

最高裁判所第三小法廷
   裁判長裁判官  島        保
   裁判官     河  村  又  介
   裁判官     小  林  俊  三
   裁判官     本  村  善 太 郎

最高裁裁判所判例集記載は次の通りです。
出典:最高裁判所判例集

最高裁判所判例集

「職務の執行に当つた公務員は、行政機関としての地位においても、個人としても、被害者に対しその責任を負担するものではない。」の趣旨は、「職務の執行に当たった公務員が直接に被害者に対して責任を負わないけれども損害賠償金は故意又は重大な過失を犯した公務員が負担するです。

「責任」の意味
人間の行為が自由な行為であり、その行為の原因が行為者にある場合に、その行為ならびに行為の結果に関して、法的または道徳的な責任が行為者に帰せられる。
したがって、外部から強制された行為や、幼児や精神錯乱者の行為に関しては、その原因が行為者の自由な決定のうちにはないとして、責任が問われないのが普通である。

出典:責任の意味

検証5:国家賠償法は公務員個人に直接損害賠償責任を負わせることを認めていないのはなぜでしょう

赤木さんが提訴した事件の概要は、森友改ざん裁判"元理財局長の責任認めず判決を受けて解説によると下図の通りです。

事件の概要

国や公共団体は組織で成り立っており、集団や機構の秩序を維持するための規律は重要で部下は上司の業務上の指示に従わざるを得ません。

赤木さんは上司である佐川氏の指示に従って決裁文書の改ざんを行いましたが、もしかしたら佐川氏も上司の命令に従って改ざんを赤木氏に命令したのかもしれません。

したがって、赤木さんは佐川氏からの指示で不法行為を行ったことについて国に損害賠償責任を請求すればよく、裁判によって損害賠償額が確定したら次のステップ、すなわち不法行為を決定したトップを特定させ損害賠償金の回収を国に任せればよいのです。

検証6:国が「認諾」したのは個人が負担することはないと考えたからでしょう

公務員の故意または過失に因るものであれば損害賠償責任は国になりますが、賠償金の真の負担者は故意または過失を犯した張本人の公務員です。

国があっさりと1億700万円の損害賠償金と公務員の不法行為を「認諾」したのは、国家賠償法1条2項の規定の認識がなかったからでしょう。

国は当初争う姿勢を示していたにも関わらず、裁判所が尋問をどうするかという話をした直後に一転して2021年12月に約1億700万円の賠償責任を全面的に「認諾(民事訴訟で被告が原告の請求を正当なものとする陳述)」したのは問題で裁判を継続させて判決で適正な損害賠償金になるようにしないと損害賠償金を支払う公務員に対して国は公務員を苦しめることになります。

尋問を避けようとして速やかに裁判を終結させるために「認諾」した国の指定代理人「法務省」の責任が問われます。

検証7:原告訴訟代理人の問題点

佐川氏は「公務員は損害賠償責任を負わないという最高裁判例がある」と話していましたが、弁護士である原告訴訟代理人は最高裁判例や国家賠償法を提訴前に読みこなすこともなく一般に言われていることを信じて佐川氏に損害賠償責任を求めたのは落ち度といえましょう。

国は当初争う姿勢を示していたにも関わらず、裁判所が尋問をどうするかという話をした直後に一転して2021年12月に約1億700万円の賠償責任を全面的に認める「認諾」をしたというのですから、国家賠償法第1条2項に基づいて国が公務員に求償権を行使し公務員の誰が損害賠償金を負担し国庫に返納したかを確認すれば赤木さんの気持ちも少しはすっきりするのではないかと思います。

国の求償権行使後の完了確認について

国家賠償法の規定は、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、その公務員が弁償することを最終目的にしていますので、原告ははその公務員が弁償したかどうか確認する権限があると思いますし、また、国民も国又は公共団体に返納されたかどうかの「知る権利」も有していると思います。

1億700万円の支払いを求められた公務員は上司からの業務命令であったことを主張し支払いを拒むでしょう。
最終的に支払わなければならないのは決裁文書の改ざんを決定し命令した最初の人物になるはずです。

 ま  と  め

国家賠償法の規定を正当に解釈されてこなかったことにより、国又は公共団体が「求償権」を行使しなかった案件は多数に及ぶと思います。

国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を与えたにもかかわらず、加害者本人は損害金の支払い義務が生じないとして済ましてきたことに何の疑問も感じてこなかった国及び公共団体の責任は重大です。