1.医原病解明の必要性

顎関節症の発症原因は歯科医師による医療過誤が原因なので、顎関節症は医原病です。
顎関節が偏位するとそこを起点として四方八方へとなだれ込むようにして全身の細胞のメカニズムを乱していきます。顎関節症は万病のもとです。
自然科学の論理なき医療行為は新たな病気の発症を招き、病因の解明をしないままに病巣を治療する行為は種々の新たな医原病の発症につながり患者を苦しめていきます。

2.三権の法解釈の誤りによる違法行為を国民が指摘する必要性

実親子関係に重大な影響を及ぼす出生届出や衆議院解散等、三権(国の統治権の立法権、司法権および行政権)の誤った判断や恣意的な法解釈による違法行為は、法治国家を否定する行為です。
国民は憲法や法律の規定、法令用語の常識を根拠にその誤りを指摘して、国民の力で法治国家を守り秩序ある社会にしていきましょう。

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2.認知無効最高裁判決について

認知無効最高裁判決の概略

婚姻した女性には、血縁上のフィリピン人の実父が法律上存在する子がいたが、男性は血縁上の父子関係がないことを知りながら婚姻した女性の子を認知しました。
男性と子との関係は一貫して不仲で、その後女性との離婚請求の認容判決があり、男性はさらに認知無効の請求をしました。

平成26年1月14日に認知無効請求を認容する最高裁判決があり、ネット上で従前は認知者から認知の取り消しができないとされてきたが、今回の最高裁判決により認知者は認知無効の訴えができることになったと述べています。

法律上、認知者が認知無効の訴えができるという規定になっているのでしょうか。検証してみたいと思います。

判決理由

判決文全文 判決文全文

最高裁第三小法廷(裁判長裁判官 大谷剛彦 、裁判官 岡部喜代子、 裁判官 寺田逸郎、 裁判官 大橋正春、 裁判官 木内道祥 )は、大橋正春裁判官の反対意見のほか,裁判官全員一致の意見で認知無効請求を認容しました。

  1. 血縁上の父子関係がないにもかかわらずされた認知は無効というべきであるところ、認知者が認知をするに至る事情は様々であり、自らの意思で認知したことを重視して認知者自身による無効の主張を一切許さないと解することは相当でない。
  2. また、血縁上の父子関係がないにもかかわらずされた認知については、利害関係人による無効の主張が認められる以上(民法786条)、認知を受けた子の保護の観点からみても、あえて認知者自身による無効の主張を一律に制限すべき理由に乏しく、具体的な事案に応じてその必要がある場合には、権利濫用の法理などによりこの主張を制限することも可能である。
  3. そして、認知者が、当該認知の効力について強い利害関係を有することは明らかであるし、認知者による血縁上の父子関係がないことを理由とする認知の無効の主張が民法785条によって制限されると解することもできない。
  4. そうすると、認知者は、民法786条に規定する利害関係人に当たり、自らした認知の無効を主張することができるというべきである。
  5. この理は、認知者が血縁上の父子関係がないことを知りながら認知をした場合においても異なるところはない。
  6. 従って、認知の無効を主張することができる。
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法律用語「その他の」と「その他」は、意味が異なります

法律の条文を解釈するうえで重要なことは、法律用語の意味を正確に理解していることです。
「法令用語の常識(著者 林修三)」によると、「その他の」と「その他」は、日常用語としては似たようなことばであるが、法令用語としては使い分けられていると述べており、詳しくは次の通りです。

「その他の」については、次のように記載されています。

「内閣総理大臣その他の国務大臣」、「俸給その他の給与」、「委員会の委員、非常勤の監査委員その他の委員」というような用例を見てもわかるように、「その他の」が使われている場合は、「その他の」前に出てくることばは、後に出てくる一そう意味内容の広いことばの一部をなすものとして、その例示的な役割を果たす趣旨で使われているのである。

すなわち、「内閣総理大臣」、「俸給」、「委員会の委員」ということばは、それぞれの後に続く「国務大臣」、「給与」、「委員」という、より意味内容の広いことばの例示として使われているのである。

「その他」については、次のように記載されています。

これに対し、「勤続期間、勤務能率その他勤務に関する諸条件」、とか、「賃金、給料その他これに準ずる収入」というように、「その他」ということばが用いられている場合は、その「その他」の前にあることばと後にあることばとは、「その他の」の場合とちがって、全部対一部例示の関係にあるのではなくて、並列関係にあるのが原則である。

上記の例でいえば、「賃金、給料」と「これに準ずる収入」とは一応別の観念として並列されているのであって、賃金、給料という観念は、「これに準ずる収入」の一部の例示として揚げられているのではないのである。

認知した者は「当事者」であって、「利害関係人」に該当しません

認知した当事者については、次のように規定されています。

民法第785条 認知の撤回の禁止
認知した父又は母は、その認知を取り消すことができない。

認知に対する利害関係人については、次のように規定されていますが、「主張」という文言が、「認知無効の訴え」ができるという意味まで含むかについては後の方で検証していきたいと思います。

民法第786条 認知に対する反対事実の主張
子その他の利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することができる。

第786条の「子その他の利害関係人」は、特定の人を指しています

民法第786条を解釈するには、その前に次の条文を知ることが重要です。

第782条 成年の子の認知
成年の子は、その承諾がなければ、これを認知することができない。

第783条 胎児又は死亡子の認知
(1)省略
(2)父又は母は、死亡した子でも、その直系卑属があるときに限り、これを認知することができる。この場合において、その直系卑属が成年者であるときは、その承諾を得なければならない。

民法第786条は、「子その他の利害関係人」と規定されていますので、「その他の」前に出てくる「子」は、後に出てくるその他の利害関係人よりも、より意味内容の広いことばの例示として使われていることになります。
すなわち、「その他の利害関係人」は、「子」よりも立場が下に位置する者を指し、第782条及び第783条からその他の利害関係人は、「子の直系卑属」とわかります。

以上から、認知した父又は母は、認知を取り消すことはできず、また、認知に対する利害関係人に該当しないことも法文上で明示されていることになります。

第786条「認知に対して反対の事実を主張することができる」の解釈

実親子関係は、出生届出あるいは認知届出により戸籍に記載されることによって実親子関係が成立するのであって、その届出がない限り、実親子関係は成立しません。

出生届出人が提出した内容は、真実に反していても後に出生届出人本人からの取り消し請求を法が認めていないことは、前ページ司法1.父子関係最高裁判決の嫡出子に関する諸規定からもおわかりになったと思いますが、認知届出人についても同様です。

実親子関係は、人工受精等医師の関与がない限り、第三者は子の実親が誰であるか知り得ません。
認知届出をしてそれが戸籍に記載された以上は、いかなる理由があっても認知届出人本人からの実親子関係の取り消しを法が認めないのは当然です。

ところで民法第786条「子その他の利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することができる。」という規定は、どのように解釈するとよいのでしょうか。

まずは、「反対」と「事実」の言葉の意味を調べてみましょう。
広辞苑によると次の通りです。

反対
物事が対立・逆の関係にあること

事実
真実の事柄、ほんとうにあった事柄

言葉の意味から、「認知に対して反対」とは、「今まで認知してこなかったということ」、「事実」とは、「ほんとうにあった事柄」、すなわち、「今まで認知してこなかったという事実」、これが反対の事実です。

本来、実親子関係の届出はすべきことで、届書その他に不備がなければ行政は受理して戸籍に記載しなければなりませんし、子自身は実親が誰であるか認識できるはずがありませんので、認知しようとする者に対して認知を拒絶することなどできません。

しかし、出生後20年以上も認知してこなかった事実を子は主張して、認知しようとする者に対して、認知を拒絶できる権利を法は第786条で与えました。

認知の無効もしくは取消しの訴えができる場合とは

第782条「成年の子の認知」、第783条「胎児又は死亡子の認知」の場合は、子その他の利害関係人の承諾を必要としています。
要件が満たされているとして認知届が受理されても、その承諾に無効原因もしくは取消し原因がある場合、子その他の利害関係人は、認知の無効もしくは取り消しを訴えることができることになります。

このため旧人事訴訟手続法でも第27条で認知の無効若しくは取消の訴えを明示していました。

法律用語の「無効」と「取消し」の相違点と「法律行為」の意味について

最高裁は、判決理由で次のように述べています。

血縁上の父子関係がないにもかかわらずされた認知は無効というべきであるところ、認知者が認知をするに至る事情は様々であり、自らの意思で認知したことを重視して認知者自身による無効の主張を一切許さないと解することは相当でない。

認知者は、民法786条に規定する利害関係人に当たり、自らした認知の無効を主張することができるというべきである

最高裁判決理由は、法律用語の初歩的な基本知識である「無効」と「取消し」の相違点や「法律行為」についての理解が欠如しています。

法律用語辞典(出版社 株式会社自由国民社)には、「無効」と「取消し」の相違点について、次のように比較して記載されています。

無効 取消し
効力のないものとされるのに特定人の主張は必要でなく当然効力がない。 特定人の主張(取消し)があって、はじめて効力がなくなる。
すべての者は、はじめから効力のないものとして取り扱わねばならない。 取消しのない間は、効力のあるものとして取り扱わねばならない。
放置しておいても、効力のないことに変わりはない。 放置しておくと、無効とすることができなくなる。

法律用語辞典(出版社 株式会社自由国民社)には、「法律行為」について、次のように記載されています。

法律行為は、意思表示がかなめとなり、その内容に従って権利関係の変動を生ずるのを通例とする行為である。
通例どおり、
権利関係の変動を生ずる場合を有効な法律行為、
生じない場合を無効な法律行為、
一応有効だが、一定の旨の取消しがあると無効となる場合を取り消し得べき法律行為という。

認知者からの認知届出が内容に従って通例どおり受理されたのですから、一応有効であって、無効な法律行為に該当しません。

一定の旨の取消しがあると無効になる場合は取り消し得べき法律行為に該当しますが、それを許さない場合は取消し禁止を規定することで足ります。

法律用語の「法律行為」を正確に理解すると、認知した父や母に、認知の取消しを第785条で禁止することで、いかなる理由があっても父や母からの認知無効の主張を法が認めていないことがわかります。

ここでこのページの冒頭に戻って認知無効最高裁判決の概略をもう一度読んでみてください。

判決の概略を再読された皆さんは、司法の最高水準とされる最高裁裁判官の判決文の内容についてどのような感想を持たれましたか。

前ページ司法1.父子関係最高裁判決を読まれた方は、出生届出人から後に実親子関係が真実に反するとしても、その取り消しを法は認めないという立法趣旨が根幹にあるということを、関連する法律のいくつもの条文から理解されたと同時に、判決するには、事実関係を法に照らして関連する条文をすべて理解して判断することが重要ということもおわかりになったと思いますが、認知届出人についても同様です。

判決は、裁判官四人全員に共通して、事実関係に適用すべき関連のある法律の条文の趣旨や法律用語の意味についての理解がなく、裁判官独自の見解を述べているにすぎません。

最高裁裁判官の補足意見についても検証してみましょう

判決では3人の裁判官が補足意見を述べています。
補足意見を読んで初めて裁判官の解釈の過ちの原因がわかりますが、補足意見がない場合多くの人々は、判決文だけを読んで単純に認知者からも認知無効の訴えができると考えるでしょう。
判決文は法の根拠を明確に説明したものでなければならないと思います。

補足意見から裁判官の知識の程度がわかります。補足意見を検証することも重要です。

木内道祥裁判官の補足意見について

木内道祥裁判官の補足意見全文 木内道祥裁判官の補足意見全文

木内道祥裁判官は、「真実に反する認知は無効であり、真実に反する以上、認知者も錯誤の有無を問わず民法786条により認知の無効を主張することができ、真実である限り、詐欺強迫による認知の取消もできないと解する。」と述べています。

認知という法律行為に「錯誤」、「詐欺・強迫」という専門用語が出てきましたので、それらについて調べてみましょう。

「錯誤」については、民法第95条に規定されています。

第95条
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

「錯誤」の意味については、法律用語辞典(出版社 株式会社自由国民社)に次のように記載されています。

表意者に認識の誤り(錯誤)があるために、真意と異なることに気が付かないでした意思表示を、錯誤による意思表示または単に錯誤という。

「詐欺・強迫」については、民法第96条に規定されています。

第96条
(1)詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
(2)相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
(3)前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

認知に関連するすべての規定や法律用語の意味を正確に理解していれば、「錯誤、詐欺、強迫」の概念が入り込む余地のないことを、皆さんはおわかりになったと思います。

裁判官は、次のことも述べています。

民法786条は、子以外の利害関係人も認知無効の主張をすることを認めており、この利害関係人には、子の母、認知者の妻、認知によって相続権を害される者なども含まれる。
また、同条による認知無効の主張については期間の制限も設けられてはいない。

戸籍に記載されて実親子関係が成立すると、国籍、社会保障、親子間を含む親族に権利義務関係等が生じ、第三者も複雑に絡んできます。

第786条にその他の「の」を除いた「子その他利害関係人」と規定されているなら、「子」と「その他利害関係人」は別の観念として並列されている意味になりますので、裁判官が述べているように、「子の母、認知者の妻、認知によって相続権を害される者」も利害関係人になるでしょう。
しかし、条文は「その他の」と規定されていますので、「子の母、認知者の妻、認知によって相続権を害される者」は含まれません。

認知届出がされて成立した実親子関係が真実に反するからといって、利害関係のある者を広範囲に認めて認知無効や取り消しの訴えを法が認めると利害関係が複雑化し争いが増します。

認知無効や取り消しの請求を認めないことが、真実に反する認知届出の抑止力になります。

寺田逸郎裁判官の補足意見について

PDF 寺田逸郎裁判官の補足意見全文
PDF 補足意見の冒頭部分
PDF 補足意見の第1項部分
PDF 補足意見の第2項部分

寺田逸郎裁判官の補足意見は長文ですが、冒頭、第1項、第2項の三部に分かれています。

冒頭は、多数意見の結論には賛同するが、その理由付けの重要な部分について他の裁判官とは見解を異にすると述べています。

第1項は(1)(2)(3)に区分して、民法の認知規定の趣旨から、認知者からの認知無効、取り消しはできないとする理由をそれぞれで述べています。

第2項は、子にはフィリピンに血縁上の実父が存在するという事情があり、認知を認めた状態は実父が重複することになるので、父子関係がないことを理由に無効とするのではなく、公的な秩序に反することを無効の根拠とし,例外的に,認知者自身も,父が重複していたことを理由として認知が無効であることを主張することができると述べています。

Webサイトによると、公の秩序は、有斐閣『法律用語辞典第3版』に次のように記載されているようです。

「公の秩序、善良の風俗」
公の秩序は、国家、社会の秩序ないし一般的利益を指し、善良の風俗は、社会の一般的道徳観念を指す。両者を区別する実益は乏しく、全体として社会的妥当性を意味するものとして用いられる。
全法律体系を支配する理念を表したもの。略して公序良俗という。
民法90条は、これに反する法律行為を無効とする旨を規定している。

また、民法第90条は、具体的に律する条文が存在しないような行為に対して一般条項として機能しているともいわれています。

認知者から認知の取消しができないとする絶対規定があるのに、民法第90条の規定の「公の秩序」という具体性を明示していない理論を持ち出して強引に無効に導こうとする手法は、悪質であり許されません。

自分の子でないことを知りながら認知し、後に認知無効が認められることの方が「公の秩序」に反すると思います。

なお、寺田逸郎裁判官は後に最高裁長官になられました。

大橋正春裁判官の補足意見について

大橋正春裁判官の補足意見全文 大橋正春裁判官の補足意見全文

大橋正春裁判官は、多数意見と異なり,法に照らし、血縁上の父子関係が存在しないことを理由として認知の無効を主張することはできないと述べています。

補足意見を述べていない二人の裁判官について

大谷剛彦裁判長及び岡部喜代子裁判官は、意見を述べていませんので、判決文通りの考えだけであるとすると、法律の規定を無視しているのか、それとも関連する法文を理解できないかのいずれかになると思います。

検証:法律と最高裁判決のどちらが優先されますか

裁判官は憲法及び法律に拘束されています

憲法第76条第3項は、裁判官について次のように定めています。

すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律のみに拘束される。

裁判官は、憲法によって憲法及び法律に拘束されているのですから、法令用語を正確に理解していなければならず、かつ、憲法や法律の規定の趣旨を正しく理解していることが求められているのですから、裁判官が独立してその職権を行っても五人全員の裁判官は、同じ理由で同じ結論にたどり着くはずです。

憲法第76条第3項に照らすと最高裁であっても、憲法や法律の規定に反する判決は無効になると思います。

前ページ司法1.父子関係最高裁判決や認知無効の判決文を通して私たち国民は、憲法や法律の規定に反する判決の結論が社会に独り歩きする現象があることを知りました。

判決は法律用語を正確に理解し、事件に関連する憲法や法律の規定を遍く照らして判断された判決文でなければならず、国民が憲法や法律の規定を正しく理解できるような内容を含んだものでなければなりません。

戸籍に記載するには実父母を特定する証明資料が必要です

実母の特定

戸籍法第49条第3項に出生届に添付する書面が規定されています。

戸籍法第49条
1 出生の届出は、14日以内(国外で出生があつたときは、3箇月以内)にこれをしなければならない。
2 届書には、次の事項を記載しなければならない。
一 子の男女の別及び嫡出子又は嫡出でない子の別
二 出生の年月日時分及び場所
三 父母の氏名及び本籍、父又は母が外国人であるときは、その氏名及び国籍
四 その他法務省令で定める事項
3 医師、助産師又はその他の者が出産に立ち会つた場合には、医師、助産師、その他の者の順序に従つてそのうちの1人が法務省令・厚生労働省令の定めるところによつて作成する出生証明書を届書に添付しなければならない。ただし、やむを得ない事由があるときは、この限りでない。

出生届に添付された第三者作成の書面により実母が特定されることになります。
したがって、多くの場合、実母と名乗るだけでは戸籍に記載されないことになります。

嫡出子の場合の実父の特定

前ページ司法1.父子関係最高裁判決を読まれた方は、おわかりだと思いますが、出生届書に記載された「「嫡出子である旨」と「父の氏名」から、民法第772条「嫡出性の推定」の規定を適用することになり、実父の証明資料は、婚姻記載のある戸籍になります。

実父特定にも証明資料が必要なことがわかります。

民法第772条
1 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2 婚姻成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

胎児認知の場合の実父の特定

民法第783条で胎児を認知する場合には、母の承諾を必要としています。
母の承諾が実父特定の証明資料です。

第783条(胎児・死亡子の認知)
1 父は、胎内に在る子でも、認知することができる。この場合においては、母の承諾を得なければならない。
2 省略

子の出生後に認知する場合の実父の特定

子の出生後に認知する場合にも実父であるという証明資料が必要ですが、それは何と思いますか。
実母が提出した出生届書です。

胎児認知の場合出生届出がされていませんので、認知届出に母の承諾が必要になりますが、子の出生届書には、「嫡出でない子」の旨と「父の氏名、本籍、外国人であるときは国籍」の記載が求められています。

したがって、父から認知届出があった場合は、実母から提出された出生届書が証明資料になり、父の氏名、本籍、外国人であるときは国籍の記載が一致しているかどうかを行政は確認しなければなりません。

出生届書は行政の手中にあり、照合することは行政の義務であり、これを怠って認知届を受理し、戸籍に記載したとき、行政はその責任を負うことになると思います。

出生届出後の認知届書に母の承諾をあえて求めていないのは、真実に反する届出がされるのを防止するためと思います。

認知届書と出生届書の照合は、行政に課された義務です

戸籍法施行規則の第48条および第49条は、次のように規定しています。

第48条
(1) 戸籍の記載手続を完了したときは、届書、申請書その他の書類は、本籍人と非本籍人とに区別し、事件の種類によつて、受附の順序に従い各別にこれをつづり、且つ、各々目録をつけなければならない。但し、市町村長は、相当と認めるときは、事件の種類別に分けてつづることを要しない。
(2) 前項の書類で本籍人に関するものは、一箇月ごとに、遅滞なく管轄法務局若しくは地方法務局又はその支局にこれを送付しなければならない。
(3) 第一項の書類で非本籍人に関するものの保存期間は、当該年度の翌年から一年とする。

第49条
(1) 前条第二項の規定によつて送付された書類は、受理し、又は送付を受けた市役所又は町村役場の区別に従い、年ごとに各別につづつて、これを保存しなければならない。但し、分けてつづることを妨げない。
(2) 前項の書類の保存期間は、当該年度の翌年から二十七年とする。

認知届書に証明資料の添付を求めていないのは、真実に反する届出を防止するためであり、本籍地における届書の保存期間が27年と長期なのは、相互の届書の一致の有無を照合する必要があるためと思います。

戸籍法施行規則第50条も該当するのではないかと思います。

第50条
(1) 戸籍の記載を要しない事項について受理した書類は、市町村長が、年ごとに各別につづり、且つ、目録をつけて、これを保存しなければならない。但し、分けてつづることを妨げない。
(2) 前項の書類の保存期間は、届出によつて効力を生ずべき行為に関するものは、当該年度の翌年から五十年、その他のものは、当該年度の翌年から十年とする。

認知の訴えにも出生届書との一致が必要と思います

戸籍法第48条に届書の受理証明書を請求できる規定があります。

第48条
(1) 届出人は、届出の受理又は不受理の証明書を請求することができる。
(2) 利害関係人は、特別の事由がある場合に限り、届書その他市町村長の受理した書類の閲覧を請求し、又はその書類に記載した事項について証明書を請求することができる。
(3) 第10条第3項及び第10条の3の規定は、前2項の場合に準用する。

認知の訴えが認められても出生届書に記載された事項と異なる場合、行政は認知届を受理できるのでしょうか。

法務省の責任

前ページ無戸籍児への旅券発給条件は「 前夫の姓」を記載することからもわかるように、夫でない男性の子を懐胎したのに、戸籍上は婚姻期間中であったために嫡出でない子としての真実の出生届出を行政に受理してもらえず、実母はやむなく子を無戸籍にせざるを得ませんでした。
無戸籍であるがために母子が受けた苦しみは相当に大きかったと思います。

子を無戸籍にせざるを得ない状況に追い込んだ原因は、法律用語や法律の規定を正しく理解できなかった法務省の歴代の戸籍担当課長や民事局長にあるのは明らかです。

認知についても外国人女性の子を日本人男性が認知し、後に男性の子でないという報道が時々ありますが、このような事例も行政側がなすべき義務を果たしていない結果と思います。

無戸籍状態の子が存在した実態や認知届出受理時の確認すべき事項を怠って認知届を受理した原因は行政側にあり、法務省はその責任を明らかにすべきと思います。