1.医原病解明の必要性

顎関節症の発症原因は歯科医師による医療過誤が原因なので、顎関節症は医原病です。
顎関節が偏位するとそこを起点として四方八方へとなだれ込むようにして全身の細胞のメカニズムを乱していきます。顎関節症は万病のもとです。
自然科学の論理なき医療行為は新たな病気の発症を招き、病因の解明をしないままに病巣を治療する行為は種々の新たな医原病の発症につながり患者を苦しめていきます。

2.三権の法解釈の誤りによる違法行為を国民が指摘する必要性

実親子関係に重大な影響を及ぼす出生届出や衆議院解散等、三権(国の統治権の立法権、司法権および行政権)の誤った判断や恣意的な法解釈による違法行為は、法治国家を否定する行為です。
国民は憲法や法律の規定、法令用語の常識を根拠にその誤りを指摘して、国民の力で法治国家を守り秩序ある社会にしていきましょう。

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12.受遺者への遺贈を認めない判決は、民法の規定に反します

相続人のほかに受遺者がいた場合の最高裁判決

相続人が不動産所有権の相続手続きを完了してから15年後に遺言書の存在 が明らかになり、遺産は相続人と受遺者2名に等しく分与する旨の遺言に対し、 相続人が所有権の取得時効を主張した場合、包括遺贈の遺産を受遺者は取得でき ないとする判決が令和6年3月19日最高裁第三小法廷でありました。
裁判官は、裁判長裁判官 渡邉惠理子、 裁判官 宇賀克也、林 道晴、長嶺安政、 今崎幸彦です。
概略は下記のとおりです。

  1. 法定相続人は養子1名(被上告人)
  2. 受遺者は甥の「Y1」(上告人)と「A」の2名
  3. 遺言執行者は、「Y2」と「Y3」(上告人)
  4. 被相続人「B」は、平成13年4月、「Y1」および「A」並びに養子 に遺産を等しく分与する旨の自筆証書遺言をし、平成16年2月13日 死亡
  5. 相続人は不動産所有権の相続登記を平成16年3月に完了
  6. 平成30年自筆証書遺言書を裁判所が検認
  7. 裁判で相続人は民法第162条2項による時効取得を主張
  8. 裁判で受遺者は相続回復請求権を主張
  9. 控訴審判決は、相続人の取得時効成立を是認
  10. 最高裁は、原審の判断は正当とし、相続人の所有権時効取得が確定

最高裁判決は、下記の とおりです。

令和4年(受)第2332号 遺言無効確認等請求事件
令和6年3月19日 第三小法廷判決

主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。

理 由

上告人らの上告受理申立て理由(ただし、排除された部分を除く。)につい て

1 本件は、被上告人が、上告人らに対し、原判決別紙物件目録記載の土地建 物(以下「本件不動産」という。)について、上告人らの被上告人に対する上告 人Y1及び原審控訴人Aへの持分移転登記請求権が存在しないことの確認等を求 める事案である。

2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
Bは、平成13年4月、甥である上告人Y1及びA並びに養子である被上告人に 遺産を等しく分与する旨の自筆証書遺言(以下「本件遺言」という。)をした。

Bは、本件不動産を所有していたが、平成16年2月13日に死亡した。B の法定相続人は、被上告人のみである。

被上告人は、平成16年2月14日以降、所有の意思をもって、本件不動産 を占有している。被上告人は、同日当時、本件遺言の存在を知らず、本件不動産 を単独で所有すると信じ、これを信ずるにつき過失がなかった。
被上告人は、平成16年3月、本件不動産につき、被上告人単独名義の相続を原 因とする所有権移転登記をした。

上告人Y2及び同Y3は、平成31年1月、東京家庭裁判所により、本件遺 言の遺言執行者に選任された。

被上告人は、平成31年2月上告人ら及びAに対し、本件不動産に係る上告 人Y1及びAの各共有持分権につき、取得時効を援用する旨の意思表示をした。

3所論は、上告人Y1及びAの有する民法884条所定の相続回復請求権の 消滅時効が完成していないところ、相続回復請求の相手方である被上告人は、上 記消滅時効の完成前に上記各共有持分権を時効により取得することはできないと いうべきであるのに、被上告人による時効取得を認めた原審の判断には、法令の 解釈適用の誤り及び判例違反があるというものである。

4 民法884条所定の相続回復請求権の消滅時効と同 法162条所定の所有権の取得時効とは要件及び効果を異にする別個の制度であ って、特別法と一般法の関係にあるとは解されない。
また、民法その他の法令において、相続回復請求の相手方である表見相続人が、 上記消滅時効が完成する前に、相続回復請求権を有する真正相続人の相続した財 産の所有権を時効により取得することが妨げられる旨を定めた規定は存しない。
そして、民法884条が相続回復請求権について消滅時効を定めた趣旨は、相続 権の帰属及びこれに伴う法律関係を早期かつ終局的に確定させることにある
(最高裁昭和48年(オ)第854号同53年12月20日大法廷判 決・民集32巻9号1674頁参照)ところ、上記表見相 続人が同法162条所定の時効取得の要件を満たしたにもかかわらず、真正相続 人の有する相続回復請求権の消滅時効が完成していないことにより、当該真正相 続人の相続した財産の所有権を時効により取得することが妨げられると解するこ とは、上記の趣旨に整合しないものというべきである。

以上によれば、上記表見相続人は、真正相続人の有する 相続回復請求権の消滅時効が完成する前であっても、当該真正相続人が相続した 財産の所有権を時効により取得することができるものと解するのが相当である。
このことは、包括受遺者が相続回復請求権を有する場合であっても異なるもので はない。

したがって、被上告人は、本件不動産に係る上告人Y1及びAの各共有持分権を 時効により取得することができる。

5 以上と同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。
所論引用の判例のうち、各大審院判例(大審院明治44年(オ)第56号同年7 月10日判決・民録17輯468頁、大審院昭和6年(オ)第2930号同7年 2月9日判決・民集11巻3号192頁)は、昭和22年法律第222号による 改正前の民法における家督相続制度を前提とする相続回復請求権に関するもので あって、上記判断は、上記各大審院判例に抵触するものではない。
また、その余の判例は、事案を異にし、本件に適切でない。論旨は採用すること ができない。
なお、上告人Y1のその余の上告については、上告受理申立て理由が上告受理の 決定において排除された。

よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 渡 惠理子 裁判官 宇賀克也 裁判官 林 道晴 裁判官 長嶺安政 裁判官 今崎幸彦

相続人と受遺者では民法の適用条文が異なります

被相続人が遺産の処分について相続人のほかに受遺者にも遺贈する遺言の場 合、「受遺者」が正規表現であり、「相続人」とは言いません。
したがって、相続人と受遺者について民法は区別して規定しています。
以下でその相違を検証していきましょう。

検証1:先に受遺者に関する民法条文から検証していきましょう。

第三節 遺言の効力

(遺言の効力の発生時期)
第985条 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。

2 遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就し たときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。

(遺贈の放棄)
第986条 受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることがで きる。

2 遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

(受遺者に対する遺贈の承認又は放棄の催告)
第987条 遺贈義務者(遺贈の履行をする義務を負う者をいう。以下この節に おいて同じ。)その他の利害関係人は、受遺者に対し、相当の期間を定めて、そ の期間内に遺贈の承認又は放棄をすべき旨の催告をすることができる。この場合 において、受遺者がその期間内に遺贈義務者に対してその意 思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなす。

(受遺者の相続人による遺贈の承認又は放棄)
第988条 受遺者が遺贈の承認又は放棄をしないで死亡したときは、その相続 人は、自己の相続権の範囲内で、遺贈の承認又は放棄をすることができる。ただ し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

(遺贈の承認及び放棄の撤回及び取消し)
第989条 遺贈の承認及び放棄は、撤回することができない。
2 第919条第2項及び第3項の規定は、遺贈の承認及び放棄について準用す る。

(包括受遺者の権利義務)
第990条 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。

(受遺者による担保の請求)
第991条 受遺者は、遺贈が弁済期に至らない間は、遺贈義務者に対して相当 の担保を請求することができる。停止条件付きの遺贈についてその条件の成否が 未定である間も、同様とする。

(受遺者による果実の取得)
第992条 受遺者は、遺贈の履行を請求することができる時から果実を取得す る。
ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

(遺贈義務者による費用の償還請求)
第993条 第299条の規定は、遺贈義務者が遺言者の死亡後に遺贈の目的物 について費用を支出した場合について準用する。
2 果実を収取するために支出した通常の必要費は、果実の価格を超えない限度 で、その償還を請求することができる。

(受遺者の死亡による遺贈の失効)
第994条 遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を 生じない。
2 停止条件付きの遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したとき も、前項と同様とする。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したとき は、その意思に従う。

(遺贈の無効又は失効の場合の財産の帰属)
第995条 遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によってその効力を失 ったときは、受遺者が受けるべきであったものは、相続人に帰属する。
ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

(相続財産に属しない権利の遺贈)
第996条 遺贈は、その目的である権利が遺言者の死亡の時において相続財産 に属しなかったときは、その効力を生じない。ただし、その権利が相続財産に属 するかどうかにかかわらず、これを遺贈の目的としたものと認められるときは、 この限りでない。

第997条 相続財産に属しない権利を目的とする遺贈が前条ただし書の規 定により有効であるときは、遺贈義務者は、その権利を取得して受遺者に移転す る義務を負う。
2 前項の場合において、同項に規定する権利を取得することができないとき、 又はこれを取得するについて過分の費用を要するときは、遺贈義務者は、その価 額を弁償しなければならない。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示し たときは、その意思に従う。

(遺贈義務者の引渡義務)
第998条 遺贈義務者は、遺贈の目的である物又は権 利を、相続開始の時 (その後に当該物又は権利について遺贈の目的と して特定した場合にあっては、その特定した時)の状態 で引き渡し、又は移転する義務を負う。
ただし、遺言者がその遺 言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

(遺贈の物上代位)
第999条 遺言者が、遺贈の目的物の滅失若しくは変造又はその占有の喪失に よって第三者に対して償金を請求する権利を有するときは、その権利を遺贈の目 的としたものと推定する。
2 遺贈の目的物が、他の物と付合し、又は混和した場合において、遺言者が第 243条から第245条までの規定により合成物又は混和物の単独所有者又は共 有者となったときは、その全部の所有権又は持分を遺贈の目的としたものと推定 する。

第1000条 削除

(債権の遺贈の物上代位)
第1001条 債権を遺贈の目的とした場合において、遺言者が弁済を受け、か つ、その受け取った物がなお相続財産中に在るときは、その物を遺贈の目的とし たものと推定する。
2 金銭を目的とする債権を遺贈の目的とした場合においては、相続財産中にそ の債権額に相当する金銭がないときであっても、その金額を遺贈の目的としたも のと推定する。

(負担付遺贈)
第1002条 負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度にお いてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。
2 受遺者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき者は、自ら受遺 者となることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したとき は、その意思に従う。

(負担付遺贈の受遺者の免責)
第1003条 負担付遺贈の目的の価額が相続の限定承認又は遺留分回復の訴え によって減少したときは、受遺者は、その減少の割合に応じて、その負担した義 務を免れる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意 思に従う。

第四節 遺言の執行
(遺言書の検認)
第1004条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家 庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がな い場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。

2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はそ の代理人の立会いがなければ、開封することができない。

(過料)
第1005条 前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経な いで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下 の過料に処する。

遺言の総則に次の規定があります。

(包括遺贈及び特定遺贈)
第964条 遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分 することができる。

(相続人に関する規定の準用)
第965条 第886条及び第891条の規定は、受遺者について準用する。

第965条規定の(相続人に関する規定の準用)の第886条及び第891 条は次のとおりです。

(相続に関する胎児の権利能力)
第886条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。

(相続人の欠格事由)
第891条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡する に至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった 者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しく は直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消 し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取 り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

相続人が主張した民法第162条の規定は下記のとおりです。
ここで注目すべきは、20年間あるいは10年間は他人名義になっていることで す。

(所有権の取得時効)
第162条 20年間、所有の意思をもって、平穏 に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所 有権を取得する。

2 10年間、所有の意思をもって、平穏に、か つ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開 始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

遺言の執行については民法第1004条から第1027条までに規定されて いますが、下記規定は最高裁判決を検証するのに必要不可欠な条文になります。

(遺言執行者の権利義務)
第1012条 遺言執行者は、 遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言 の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、 遺言執行者のみが行うことができる。
3 第644条、第645条から第647条まで及び第650条の規定は、遺言 執行者について準用する。

(遺言の執行の妨害行為の禁止)
第1013条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続 財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
2 前項の規定に違反してした行為は、無効とする。 ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
3 前二項の規定は、相続人の債権者(相続債権者を含む。)が相続財産につい てその権利を行使することを妨げない。

(遺言執行者の行為の効果)
第1015条 遺言執行者がその権限内において遺言執行者 であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。

上記の民法規定を基に受遺者の権利を認めなかった最高裁判決の是非を検証 していきましょう。

  1. 受遺者に「相続回復請求権」が規定されていないこと、第965条(相続人 に関する規定の準用)にも規定されていませんので受遺者は「相続回復請求権」 を主張できません。
  2. 第986条および第987条により受遺者は遺贈の放棄の意思表示をしない 限り、遺贈を承認していることになります。
  3. 「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する」旨の規定は、相続人に 関するすべての規定を指しているのではありません。
    詳しくは下記の「相続人」に関する規定の欄で考えることにしましょう。
  4. 受遺者は相続人と違って遺贈があることを知るのは裁判所の検認後になりま す。
    したがって、受遺者が受贈の権利行使の開始時期は、自筆証書遺言書の 裁判所検認後になります。
  5. 第995条に「遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によってその効 力を失ったときは、相続人に帰属する」と規定していますので、遺言書に記載さ れている遺贈が無効の場合には相続人に帰属しますが、遺言が有効な場合は裁判 所の検認が被相続人死亡の15年後であっても受遺者の権利は有効なので、相続 人は所有権の取得時効を主張することはできません。
  6. 第998条に「遺贈義務者は、遺贈の目的である物又は権利を、相続開始の 時の状態で引き渡し、又は移転する義務を負う」と規定していますので、遺言書 が被相続人死亡の15年後に明らかになった場合でも、遺贈 義務者すなわち相続人は相続開始の時の状態で受遺者に引き渡し、又は移転しな ければいけません
  7. 所有権の取得時効を主張するには、「他人の物を占有している」場合です。
    相続人は相続開始後すぐに所有権取得の相続登記をしていますので、民法第16 2条2項に該当しません。
  8. 第1012条2項に「遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行 者のみが行うことができる。」と規定しています
    相続人が所有権を取得していても遺言書により相続人の持分は自動的に3分の1 になり、遺言執行者は残りの持分3分の2を相続人の同意な しに受遺者に移転する登記手続きを行う義務があります
  9. 第1015条に「遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを 示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。」と規定していま すので、受遺者への持分移転の効果は、相続人に直接に及びます。

検証2:相続人に関する民法条文を確認しましょう

相続に関する民法規定は第882条から第959条までです。
遺言に関する規定は第960条から第1027条までです。
このように「相続」と「遺贈」は、はっきり区別されています。
相続に関する条文中、受遺者との関連で特に確認する条文は次のとおりです

第一章 総則

(相続回復請求権)
第884条 相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理 人が相続権を侵害された事実を知った時から五年間行使しないときは、 時効によって消滅する。相続開始の時から20年を経過したときも、同様とする。

第三章 相続の効力
第一節 総則

(相続の一般的効力)
第896条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利 義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

  1. 相続回復請求権を請求できるのは、相続人又はその法定代理人だけです。
  2. 第896条「相続人は、相続開始の時から、被相続人の 財産に属した一切の権利義務を承継する。 」と規定しています。
  3. 第964条に「遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部 を処分することができる。」と規定しています
  4. 第990条に「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務 を有する。」と規定していますが、 「相続人と同一の権利義務 」とは、第896条の「相続開始の時から、 被相続人の財産に属した一切の権利義を承継する。 」です。

検証3:ここで再度、最高裁判決文のその他の問題点を検証しま しょう

最高裁判決の裁判官判 断部分を抜粋して詳しく検証していきましょう。

民法884条所定の相続回復請求権の消滅時効と同法 162条所定の所有権の取得時効とは要件及び効果を異にする別個の制度であっ て、特別法と一般法の関係にあるとは解されない。
また、民法その他の法令において、相続回復請求の相手方である 表見相続人(相続 人)が、上記消滅時効が完成する前に、相続回復請求権を有 する真正相続人(受遺者) の相続した財産の所有権を時効により取得することが 妨げられる旨を定めた規定は存しない。
そして、民法884条が相続回復請求権について消滅時効を定めた趣旨は、相続 権の帰属及びこれに伴う法律関係を早期かつ終局的に確定させることにある(最 高裁昭和48年(オ)第854号同53年12月20日大法廷判決・民集32巻 9号1674頁参照)ところ、上記 表見相続人(相続人)が同法162条所定の 時効取得の要件を満たしたにもかかわらず、真正相続人 (受遺者)の有する相続回復請求権の消滅時 効が完成していないことにより、当該真正相続人 (相続人)の相続した財産の所有権を時効により取 得することが妨げられると解することは、上記の趣旨に 整合しないものというべきである。

以上によれば、上記表見相続人 (相続人)は、真正 相続人(受遺者)の有する相続回復請求権の 消滅時効が完成する前であっても、当該真正相続人 (相続人)が相続した財産の所有権を時効 により取得することができるものと解するのが相当である。
このことは、包括受遺者が相続回復請求権を有する場合であっても異なるもので はない。

したがって、被上告人は、本件不動産に係る 上告人Y1及びAの各共有持分権を時効により取得す ることができる。

5 以上と同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。
所論引用の判例のうち、各大審院判例(大審院明治44年(オ)第56号同年7 月10日判決・民録17輯468頁、大審院昭和6年(オ)第2930号同7年 2月9日判決・民集11巻3号192頁)は、昭和22年法律第222号による 改正前の民法における家督相続制度を前提とする相続回復請求権に関するもので あって、上記判断は、上記各大審院判例に抵触するものではない。
また、その余の判例は、事案を異にし、本件に適切でない。論旨は採用すること ができない。

上記最高裁判決文中の「表見相続人」や「真正相続人」が誰を指しているの かわかりづらかったので、当サイトが(相続人)または(受遺者)を付記しまし た。

「真正相続人」と「表見相続人」の意味は下記のとおりです。

戸籍上は相続人に見えても、相続権を有さない人を表見相続人と言います。
表見相続人に対して、相続権を有する相続人を真正相続人と呼びます。
万一、表見相続人によって遺産を侵害されている場合、真正相続人は5年以内に 「相続回復請求権」を行使することによって、相続財産を取り戻すことができる と民法は定めています。

表見相続人に該当するケース

表見相続人に該当する理由の中で、代表的なケースとして相続欠格がありま す。
相続欠格とは、相続財産を得る目的で不正な行為を図るなどによって、相続人と して不適格と判断されることです。
例えば、被相続人を故意に死亡させることを計画したり、実際に殺害する、ある いは、遺言書を捏造したり、自分に有利なように書くことを脅迫するなどがあり ます。

一方、被相続人の意思によって相続人から除外される相続排除も、表見相続 人に該当するケースの1つです。
相続排除とは、素行不良等で財産を浪費する可能性があるとして、相続人から除 外されるケースがあり、この場合は遺言書に明確に残す方法が一般的です。

あるいは、相続人自らが相続放棄をする場合も表見相続人に該当します。

出典:「真正相続人」と「表見相続人」

  1. 判決文は、受遺者についてはすべて「真正相続人」の表示になっていますが、 相続人(養子)については「表見相続人」と「真正相続人」が混在しています。
    上記引用の説明によると、「表見相続人」と「真正相続人」はともに「戸籍上の 法定相続人」を指し、相続欠格事由等に該当する者を「表見相続人」、それらに 該当しない者を「真正相続人」と表示することになります。
    したがって、受遺者は法定相続人ではないので「相続人」と表示することは認め られません。
    「受遺者」が正規表現であることは民法規定から容易にわかることなので、裁判 官は民法の条文を全然読んでいないことがわかります。
  2. 「民法第884条所定の相続回復請求権の消滅時効と同法第162条所定の 所有権の取得時効とは要件及び効果を異にする別個の制度であって、 特別法と一般法の関係にあるとは解されない。」と 述べていますが、このような一言で一蹴するのは裁判官が個々の関連法規の理解 が足りないからです。
    被相続人死亡後に法定相続人と遺産の総額が確定しますが、相続人の一人が被相 続人名義の不動産を10年あるいは20年平穏に、かつ、公然と占有していても 第162条規定の適用を主張できないのは、第896条に「相続人は、相続開始 の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。」と規定されて いるので被相続人の物は自動的に法定相続人全員のものになるからです。
  3. 「相続回復請求権の消滅時効が完成する前に、相続回復請求権を有する真正 相続人の相続した財産の所有権を時効により取得することが 妨げられる旨を定めた規定は存しない」と、このように規定に文言がな いことを理由にしていとも簡単に結論することは許されません。
    関連する条文から法規の趣旨を解釈することが重要でそれを遂行すれば法の趣旨 に基づいた結論に辿り着きます。
  4. 遺贈に関する民法規定を読めば、遺言が有効の場合は受遺者が遺贈を放棄し ない限り、遺贈義務者は相続開始の時の状態で引き渡し、又は移転する義務を負 うと民法第998条に規定しているのですから、受遺者の権利が認められない判 決は違法です。
  5. 憲法第76条第3項に「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権 を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」と規定されています。
    判決は、法規に拘束されている自覚のない裁判官による判決といえます。

  ま  と  め

裁判の当事者に訴訟代理人が選任されていた場合、訴訟代理人の法規に対す る知識の程度は裁判の当事者に重大な影響を与えます。

遺言執行者が選任されている場合、「遺言執行者は、遺言の内容を実現する ため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有 する。」と第1012条に規定されているにもかかわらずそれを履行しない遺言 執行者の責任を受遺者は追及すべきです。遺贈者の意思を成就させるためにも。

裁判官に法規の知識の欠如があった場合、裁判の当事者が当然に得られるべ き利益が得られない結果になります。
このようなケースについて最高裁裁判官の責任が問われない現状は憂える事態で す。

最高裁は法律審といわれ法律問題のみを扱うのですから、最高裁裁判官が事 件に関連する法規を詳細に調べずに判決する実態を許してはいけません。